
変形性膝関節症
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨だけでなく、骨、半月板、滑膜、靱帯などにも変化が起こる、膝関節全体の慢性的な病気です。

主な症状は、膝の痛み、こわばり、腫れ、曲げ伸ばしのしにくさなどです。進行すると、歩行や階段昇降、立ち上がりなどの日常生活にも支障をきたすことがあります。
以前は「加齢によって軟骨がすり減る病気」と説明されることが多くありましたが、現在では、加齢、肥満、外傷、関節への負荷、炎症、筋力、遺伝的要因などが複雑に関係する病気と考えられています。
また、レントゲンやMRIで認められる変化と、患者さんが感じている痛みの程度は必ずしも一致しません。そのため、画像だけを見るのではなく、症状・身体機能・歩き方・生活状況まで含め て評価することが重要です。
当院では、標準的な検査や治療に加えて、自由診療による検査ではVICONによる三次元動作解析や床反力計を用いて「膝の使い方」を評価したり、PRP療法などの治療も行っています。
膝は痛いけどまだ検査を受けたことのない方から、症状にお困りの方はお気軽にご相談ください。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症では以下の症状がみられます。
歩き始めに痛む
長時間歩くと痛む
階段で痛む
立ち上がるときに痛む
膝がこわばる
膝が腫れる
水がたまる(関節液が増える)
膝が最後まで伸びない
深く曲げにくい
正座が難しい
歩行速度が遅くなる
歩行距離が短くなる
膝がガクッとする
変形性膝関節症では膝の痛みがよくある症状として挙げられますが、痛みの原因は「軟骨」のすり減りだけではありません。軟骨そのものには痛みを感じる神経がほとんどありませんので、軟骨下骨や滑膜などの変化も関係すると考えられています。
また、複数の研究をまとめた解析結果では、MRI検査で骨髄病変がある場合、関節液の貯留や・滑膜炎が見られる場合は痛みが出やいと言われています。(※1)
変形性膝関節症の膝に起きていること
健康な膝では大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)の表面が滑らかな関節軟骨で覆われていますが、変形性膝関節症では、単に軟骨が薄くなるだけではなく、以下のように関節全体にさまざまな変化が生じます。
関節軟骨・軟骨下骨の変化
骨棘(こつきょく)の形成
半月板の変性・損傷
滑膜炎
関節液の増加
筋力低下
関節可動域の低下
変形性膝関節症の種類
変形する場所によって大きく分けられます。
内側型膝の内側に変形が強くみられるタイプです。日本人では比較的多く、進行するとO脚が目立つことがあります。 |
外側型膝の外側に変形が強いタイプです。 |
膝蓋大腿関節型膝蓋骨と大腿骨の間に変形がみられるタイプです。階段昇降、立ち上がり、しゃがみ込みなどで症状が現れることがあります。 |
複合型複数の関節区画に変形が認められる場合もあります。 |
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の多くは、一つの原因だけで発症するものではありません。年齢とともに増加し、特に50~60歳以降で多くなります。
主なリスク因子として、
加齢
女性
肥満・体重増加
過去の膝の外傷
半月板損傷
前十字靱帯などの損傷
O脚・X脚などのアライメント(関節の位置関係)
膝へ繰り返し大きな負荷がかかる活動
遺伝的要因
などがあります。
女性に多く、閉経後に発症や進行が増える傾向があります。女性ホルモンの変化に加え、筋力や体組成、関節の形態など、複数の要因が関係すると考えられています。
肥満と変形性膝関節症の関係
肥満は変形性膝関節症と関連すると言われています。
膝には、歩くだけでも体重の2~3倍ほどの力がかかります。体重60kgなら、歩行時に120~180kg程度の力がかかるとすると、体重の増加は膝への負担をさらに大きくしていることが分かります。
さらに、脂肪組織から分泌される炎症関連物質などを通じても、変形性関節症に関与すると考えられています。また、過去の研究では過体重の場合、変形性膝関節症のリスクが2.45倍、肥満の場合4.55倍になると言われています。(※2)
膝の外傷と変形性膝関節症の関係
複数の研究をまとめた解析結果では過去の膝の外傷は将来の画像上の変形性膝関節症の発症リスクを上昇させるという報告もあります。
また、過体重・肥満と膝外傷という2つの予防や改善が可能なリスク因子だけで、新規の変形性膝関節症の発症の約14%に関係すると推定されています。(※3)
変形性膝関節症の重症度
レントゲン検査による代表的な重症度分類がKellgren-Lawrence分類(KL分類)です。一般的には、Grade 2以上を画像上の変形性膝関節症とすることが多くあります。
Kellgren-Lawrence(KL)分類
Grade0 | 正常 |
Grade1 | 変形が疑われる |
Grade2 | 軽度 |
Grade3 | 中等度 |
Grade4 | 高度 |
ただし、KL分類は画像上の構造変化を分類したものです。治療方法はKL Gradeだけではなく、痛み、機能、生活への影響などを含めて判断します。また、画像上の変形と痛みの強さは必ずしも同じではないことにも注意が必要です。(※4、※5)
変形性膝関節症の検査
変形性膝関節症の検査には以下があります。
問診
身体機能検査
レントゲン検査
MRI検査
超音波(エコー)検査
歩行・動作評価
VICONを用いた三次元動作解析(自由診療)
これらの検査をもとに診断では、
①どの程度の構造的変化があるのか
②どの程度身体機能が低下しているのか
③何が現在の症状に関係しているのか
を総合的に評価します。
当院では、問診、レントゲン検査、理学療法士による身体機能検査、歩行動作評価のほか、患者さんのご希望に応じて三次元動作解析を用いた客観的な評価も実施し ています(自由診療)。また、同じビル内に連携するMRI検査機関がありますので、必要に応じてMRI検査も当院の受診と併せてお受けいただくことができます。
問診
痛みの場所
痛みが出る動作
症状の経過
腫れ
安静時痛・夜間痛
歩行距離
階段での痛み
仕事への影響
スポーツ歴
過去の膝外傷
などを確認します。
身体機能検査
膝の曲がり・伸び
筋力
腫れ
圧痛
関節安定性
O脚・X脚
バランス
歩行速度
立ち上がり
階段
股関節・足関節機能
などを確認します。
レントゲン検査
変形性膝関節症の基本となる画像検査です。進行している場合には、太もも(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の隙間が狭く見えることがあるため、関節の状態をレントゲン検査で評価します。
一方で、前述のようにレントゲン所見と疼痛には一定の関連があるものの、完全には一致しません。そのため、「画像+症状+身体機能」の組み合わせで評価します。
関節の隙間の狭さ
骨棘
軟骨下骨硬化
骨の変形
O脚・X脚
KL分類
などを評価します。
必要に応じて、体重をかけた状態で撮影する荷重時レントゲンを行います。
MRI検査
MRI検査では、レントゲン検査では確認ができない軟骨などの状態を詳しく評価ができます。痛みが強い場合では、MRI検査で骨髄病変や関節液・滑膜炎が見つかることもあります。
MRI検査では以下の評価が可能です。
関節軟骨
半月板
靱帯
軟骨下骨
骨髄病変
滑膜
関節液
すべての変形性膝関節症患者様にMRI検査が必要なわけではありません。
なお、当院では同じビル内に連携する検査施設がありますので、MRI検査が必要な場合はそちらで検査をお受けいただくことが可能です。
超音波(エコー)検査
超音波では、関節液の有無など以下の状態をリアルタイムに観察できます。
関節液
滑膜
腱
筋肉
脂肪体
膝周囲の軟部組織
関節内注射や膝周囲への処置を行う際にも活用できます。
歩行・動作評価
変形性膝関節症では、痛みや筋力低下などによって歩き方が変化することがありますので、以下のような歩き方などを確認します。
歩行速度
歩幅
膝の曲げ伸ばし
左右差
体幹運動
股関節・足関節との連動
歩行は単に「歩ける・歩けない」ではなく、膝にどのような負荷をかけながら歩いているかを見ることも重要です。
VICONを用いた3次元動作解析(自由診療)
当院では、必要に応じてVICON(バイコン)を用いた3次元動作解析を行います(自由診療での検査になります)。
身体にマーカーを装着し、複数のカメラで動きを計測することによって、
股関節・膝関節・足関節角度
関節運動のタイミング
左右差
歩幅
歩行速度
膝の内外方向の動き
代償動作
などを客観的に分析できます。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症の治療には、手術をせずに薬やリハビリテーション等で改善を目指す保存療法と、手術療法とがあります。また、近年では保険診療で行える治療のほかに、自由診療での治療の幅も広がってきています。
変形性膝関節症は進行を抑制し、治療に取り組むことが大切です。
現在、変形性膝関節症の治療で行われているものには以下があります。
※太字は当院で実施している治療になります。
運動療法・リハビリテーション
体重管理
薬物療法
装具療法
ヒアルロン酸関節内注射
手術療法
以下については主に自由診療で行われています。
PRP療法
体外衝撃波
ハイドロリリース
幹細胞培養上清
リハビリテーション
変形性膝関節症の治療では、患者さんの症状や生活状況に応じて、以下のような目標を設定します。
痛みを軽減する
身体機能を改善する
歩行能力を保つ
日常生活を維持する
趣味やスポーツを続ける
QOLを維持・改善する
そのため、病気や治療について理解したうえで、運動療法や必要に応じた体重管理などを基本とし、症状や状態に応じて薬物療法、注射療法、装具療法などを組み合わせて治療を行います。
また、以下の治療解説では当院で実施していない治療についても、患者さんへの情報提供の観点から記載しています。あらかじめご了承ください。
リハビリテーション・運動療法
リハビリテーション・運動療法は変形性膝関節症治療の中心となる方法の一つです。変形性膝関節症に対する運動療法の研究は数多く実施されており、痛みや身体機能の改善の観点から、実施が望ましいとされています。(※6)
筋力トレーニング
有酸素運動
関節可動域練習
バランストレーニング
歩行練習
日常生活動作練習
などを患者様の状態に合わせて行います。
※当院では保険では実施しておりませんが、自由診療でのリハビリテーションを実施しています。
体重管理
体重過多や肥満がある患者様では、減量も治療の重要な選択肢です。複数の研究をまとめた解析結果では、5~10%体重が減ることによって、痛みや自覚的な機能障害が減ったとする報告もあります。(※7)
また、食事療法と運動療法を組み合わせた分析結果では、痛みや身体機能改善も報告されています。(※8)
※当院では栄養士による指導は実施しておりませんが、総合内科医による指導・管理を行っております。
薬物療法
薬物療法では疼痛、年齢や腎機能、消化管疾患、心血管疾患などを考慮してNSAIDsをはじめ以下の鎮痛剤を選択・使用します。
NSAIDs外用薬
NSAIDs内服薬
アセトアミノフェン
その他の鎮痛薬
NSAIDsは変形性膝関節症の痛みを軽減する目的で広く用いられています。一方で、消化管障害や腎機能障害、心血管系への影響などに注意が必要です。また、アスピリン喘息のある方では使用できない場合があります。
NSAIDsには内服薬と外用薬があり、それぞれ効果や副作用などを考慮して選択します。症状や持病、服用している薬などによって適した治療が異なるため、医師にご相談ください。
装具療法
装具療法とは、足底板(インソール)を義肢装具士が作成し、身体の関節位置を整え、膝の負担を軽減させることを目的とした治療です。
※当院では実施しておりません
ヒアルロン酸関節内注射
ヒアルロン酸を膝関節内に注射し、疼痛や身体機能の改善を目的とします。保険が使える治療であることなどから、日本では広く使用されていますが、海外のガイドラインでは評価にばらつきがあります。(※9)
手術療法
十分な保存療法を行っても強い症状が続き、日常生活に大きな支障がある場合には手術療法を検討します。※当院では実施しておりませんが、ご希望がある場合には他院の紹介等致します
主な手術には、
膝周囲骨切り術
人工膝関節単顆置換術
人工膝関節全置換術
などがあります。
人工膝関節全置換術は、進行した変形性膝関節症に対する代表的な手術の一つで、痛みや身体機能の改善が期待できます。手術の適応や術式については、紹介先の医師と相談のうえ決定されます。
当院で行っている自由診療
東京メディサイトクリニックでは、まず現在の状態を評価したうえで、前述した薬物療法、注射療法のほか、
PRP療法
体外衝撃波(集束型)
ハイドロリリース
自費リハビリテーション
幹細胞培養上清液を用いた治療
などの中から、患者様の状態や希望に応じた治療方法を検討・ご提案します。
PRP療法(自由診療)
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)は、患者様自身の血液から血小板を多く 含む成分を調製し、膝関節内へ投与する治療です。疼痛や身体機能改善を目的として行います。
体外衝撃波治療(自由診療)
外衝撃波治療(集束型)は、身体の外側から患部に衝撃波を照射する治療です。変形性膝関節症に伴う痛みの軽減や身体機能の改善を目的として行うことがあります。
ハイドロリリース(自由診療)
ハイドロリリースは、超音波で組織を確認しながら、筋膜・神経周囲などの組織間に液体を注入する治療です。
変形性膝関節症の患者様でも、関節そのもの以外に、
脂肪体
筋膜
腱
神経周囲
その他の膝周囲軟部組織
が疼痛に関係している場合があります。
そのようなケースで、疼痛源を評価したうえで適応を検討します。
リハビリテーション(自由診療)
東京メディサイトクリニックでは、より詳細な評価と個別性の高い運動療法を希望される患者様を対象に、リハビリテーションを行っています。
筋力
関節可動域
バランス
歩行
階段
日常生活動作
スポーツ動作
などを評価し、個別のプログラムを作成します。
幹細胞培養上清液を用いた治療(自由診療)
幹細胞培養上清液には、幹細胞を培養した際に分泌された成長因子、サイトカイン、細胞外小胞(エクソソーム)などが含まれます。
炎症調節や組織修復への作用が期待され、研究が進められています。
変形性膝関節症は「なぜ痛い?何ができない?」を評価し、治療選択することが大事
変形性膝関節症は、膝関節に幅広い変化が起こる、膝関節全体の慢性的な病気です。検査では画像上の変形+疼痛+身体機能+歩行・動作+患者様の生活目標を総合的に考える必要があります。なぜなら、同じKL Grade 3であっても、「旅行で10km歩きたい方」と、「自宅内を安全に歩ければよい方」では、目標とする治療内容も異なるからです。
重要なのは、「この治療を行うこと」から考えるのではなく、「なぜ痛いのか、何ができなくなっているのか」を評価してから治療を選択することです。
当院では、標準的な検査に加えて、必要に応じて、VICONによる3次元動作解析によって、画像検査では分からない「膝の使い方」まで評価し、治療に活かしています。治療においては、標準治療のほか、自由診療メニューも取り揃え、患者さんの目標に寄り添った治療を心がけています。
膝は痛いけどまだ検査をしたことのない方から、膝の痛みがありお困りの方まで、まずはご相談ください。
FAQ
変形性膝関節症でしてはいけないことはありますか?
痛み を理由に膝をまったく動かさなくなると、筋力低下や関節の動きの低下につながることがあります。一方で、強い痛みを我慢して無理に運動を続ける必要もありません。 症状に合わせて運動量や負荷を調整し、適切な運動療法を継続することが大切です。痛みや腫れが強い場合や、症状が急に悪化した場合には医療機関へご相談ください。
変形性膝関節症の最初に出る症状は?
変形性膝関節症の初期には、立ち上がりや歩き始めな どの「動き始め」に膝の痛みを感じることが多くあります。進行すると、階段の上り下りや長時間の歩行などでも痛みを感じるようになることがあります。
サポーターはしたほうがよいですか?
サポーターや膝装具は、膝の不安定感や負担を軽減し、痛みや動きやすさの改善に役立つ場合があります。ただし、すべての方に必要なわけではありません。膝の状態や歩き方、関節の不安定性などを評価したうえで、必要に応じて使用します。また、サポーターだけに頼らず、運動療法や筋力強化などと組み合わせることが大切です。
痛いときでも歩いたほうがいいでしょうか?
痛みがあるからといって、まったく動かなくなると筋力や身体機能の低下につながることがあります。ただし、強い痛みを我慢して歩き続ける必要はありません。痛みの程度に合わせて歩く距離や運動量を調整し、必要に応じて筋力トレーニングなど他の運動を組み合わせることが大切です。当院では、患者さんの状態に合わせたリハビリテーションを行っています。
参考文献
作成日:
2026年9月24日
監修:
東京メディサイトクリニック院長/整形外科 高岡宏行