
ハイドロリリース
ハイドロリリース
ハイドロリリースは、超音波(エコー)で筋肉・筋膜・神経・血管などを確認しながら、筋膜の間や神経の周囲などに生理食塩水を注入する治療です。 痛みや しびれの中には、筋肉や筋膜、神経周囲の組織が関与しているものがあります。ハイドロリリースでは、エコーで目的とする組織と針先を確認しながら注射をし、組織の間を分離することで、痛みや動かしにくさの改善を目指します。
生理食塩水を用いたハイドロリリースについては、筋筋膜性疼痛や手根管症候群などを対象とした臨床研究で、痛みや症状の改善が報告されています。
一方で、ハイドロリリースによって症状が改善する仕組みについては、まだ十分に解明されていません。組織の間の動きや神経周囲の圧迫が改善することなどが考えられていますが、今後さらなる研究が必要です。
対象となる疾患
当院では、診察や超音波(エコー)検査で症状の原因を評価したうえで、治療の適応を判断します。
筋・筋膜が関与する痛み肩・肩甲骨周囲や頚部などの筋筋膜性疼痛に対して、痛みや動かしにくさの改善を目的として行います。特に上部僧帽筋の筋筋膜性疼痛については、生理食塩水を用いたRCTで疼痛改善が報告されています。 |
末梢神経周囲の痛み・しびれ手根管症候群など、神経周囲の組織が症状に関与していると考えられる場合に、神経周囲へのハイドロリリースを検討することがあります。手根管症候群ではRCTおよびシステマティックレビューが複数報告されています。 |
スポーツや日常動作に伴う筋・筋膜周囲の痛み診察やエコー評価で筋・筋膜や周囲組織が症状に関与していると判断された場合に、治療の選択肢となることがあります。 ※すべての肩こり、腰痛、しびれなどに適した治療ではありません。また、現時点では部位や疾患によってエビデンスの蓄積に差があります。診察や必要な検査を行い、症状の原因に応じて適切な治療をご提案します。 |
対象となる疾患・症状 | 期待される効果 |
肩こり・肩甲骨周囲の痛み | 肩まわりの張りや痛みを軽減し、動かしやすさの改善を目指します。 |
五十肩(肩関節周囲炎) | 肩の痛みや動かしにくさに対して、可動域の改善を目指します。 |
頚部痛・寝違え | 首の痛みや動かしにくさの軽減を目指します。 |
筋筋膜性腰痛 | 筋肉や筋膜に由来する腰痛に対して、動作時の痛みの軽減を目指します。 |
肘部管症候群・手根管症候群などの末梢神経障害 | 神経周囲へアプローチし、痛みやしびれの軽減を目指します。 |
スポーツや日常動作に伴う筋・筋膜周囲の痛み | エコーで原因部位を確認し、痛みや動かしにくさの改善を目指します。 |
※症状や原因によっては、ハイドロリリース以外の治療が適している場合があります。診察・画像検査などをもとに、医師が適切な治療方法をご提案します。
治療の流れ
診察・評価からハイドロリリース、リハビリテーションまで、症状や身体の状態に合わせて治療を行います。
※ハイドロリリースは部位により対応できる医師が異なります。当日の治療を希 望する方はあらかじめお問い合わせください。

STEP 1
診察・症状の確認
痛みやしびれの部位、症状が出る動作、日常生活やスポーツで困っていることなどを詳しく確認します。診察を行い、症状の原因となっている組織や動作を評価します。

STEP 2
エコーによる評価
痛みのある部位をエコーで確認し、筋肉・筋膜・腱・神経などの状態を評価します。必要に応じてレントゲンなどの検査も行い、症状の原因を確認します。

STEP 3
治療方針・適応の判断
診察や検査結果をもとに、ハイドロリリースが適しているかを判断します。ハイドロリリースは、すべての痛みやしびれに効果が期待できる治療ではありません。症状の原因によっては、リハビリテーションやその他の治療を優先する場合があります。

STEP 4
エコーガイド下ハイドロリリース
エコーで針先や周囲の神経・血管などを確認しながら、症状の原因と考えられる部位へ生理食塩水を注入します。筋膜や筋肉の間、神経周囲などにアプローチし、組織間の滑走性の改善を図ります。

STEP 5 リハビリテーション
ハイドロリリース後は、痛みや動きの変化を確認し、症状や身体の状態に応じてリハビリテーションを行います。ハイドロリリースによって症状が軽減しても、身体の使い方や筋力、柔軟性など、症状の原因となった要素が残っている場合には、症状が再び現れることがあります。そのため当院では、ハイドロリリースだけで治療を完結させるのではなく、リハビリテーションを組み合わせることを重視しています。運動療法やストレッチ、動作指導などを行い、症状の改善と再発予防を目指します。
※本画像は治療の流れを分かりやすく表現するため、生成AI画像を用いています。
※治療の流れは一般的な一例となります。患者さまのお身体の状態や症状、診察結果によっては、追加の検査が必要となる場合や、治療内容の変更をご提案させていただく場合があります。また、適応外と判断された場合は治療をお受けいただけない場合もありますので、あらかじめご了承ください。
治療後について
治療後は、通常の日常生活を大きく制限する必要はありません。ただし、注射部位に痛みや違和感がある場合には無理をせず、治療当日の強い運動や治療部位に大きな負担がかかる動作は控えてください。
スポーツやトレーニングの再開については、治療した部位や症状、基礎となる疾患によって異なるため、個別にご案内します。
なお、治療後の運動制限について直接比較した研究はほとんどなく、「○時間安静」「翌日から必ず運動可能」といった統一されたエビデンスはありません。
特別な安静は原則不要
日常生活・軽い運動は通常通り
効果には個人差があります
リハビリテーションとの併用を重視
費用
治療内容 | 費用(税込) |
ハイドロリリース(1か所) | 7,000円 |
※ 治療部位や症状に応じて、複数か所への施術をご提案する場合があります。
治療回数
ハイドロリリースに科学的に確立された標準的な治療回数はありませんが、1回の治療後に症状の変化がみられる場合もあります。症状や治療部位、原因によって経過は異なります。そのため、症状や治療後の変化を確認しながら、必要最小限の治療回数を目指します。
当院では、あらかじめ一定回数の治療を決めて繰り返すのではなく、治療後の痛みや身体機能の変化を確認し、その都度、追加治療が必要かを判断します。
注入液の種類、量、治療頻度などの最適な条件についてはさまざまな研究で検討されており、今後さらなる報告が期待されています。
主なリスク・副作用
ハイドロリリースは身体への負担が比較的少ない治療ですが、注射を伴うため、以下のような症状や合併症が生じる可能性があります。
注射部位の痛み・腫れ・内出血
注射の刺激により、一時的な痛みや腫れ、皮下出血が生じることがあります。
感染
注射部位から感染を生じる可能性があります。
神経・血管の損傷
頻度は低いものの、穿刺に伴って周囲の神経や血管を損傷する可能性があります。
治療部位に応じた合併症
頚部(首)・肩甲帯・胸郭周囲など、肺に近い部位への治療では、まれに気胸などの合併症が生じる可能性があります。
生理食塩水による上部僧帽筋への筋膜間注入を検討した研究では、重篤な有害事象はありませんでしたが、治療後の筋肉痛・注射部位の痛みは報告されています。
当院の安全への取り組み
超音波(エコー)で針先と周囲の神経・血管などを確認しながら、合併症のリスクに十分配慮して治療を行います。
症状が出た場合の対応
治療後に強い痛みや腫れ、しびれ、発熱などの症状がみられた場合は、速やかに当院へご連絡ください。症状に応じて診察を行い、必要な検査・処置や専門医療機関への紹介を行います。
特に、治療後に突然の胸の痛み、息苦しさ、呼吸のしづらさなどがみられた場合は、気胸などの可能性もあるため、速やかに救急外来を受診してください。
※ 血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬・抗血小板薬など)を服用している方は、治療前に医師へお申し出ください。
よくある質問
ハイドロリリースはどんな症状に効果が期待できますか?
ハイドロリリースは、筋膜や筋肉の間、神経周囲などの組織の動き(滑走)が悪くなっていることが、痛みやしびれの原因となっている場合に効果が期待できる治療です。
肩や首、腰などの痛み、肩甲骨周囲の痛み、手根管症候群などの末梢神経障害、スポーツや日常動作に伴う筋筋膜性の痛みなどに用いられます。
ただし、